作品について


 私の作品は風景を描いたものが多いです。
これまで旅先や身近な風景を切り取って作品を作ってきました。
ここ 1,2 年の間は、作品の中に偶然性を取り入れたいと考え、絵画技法の 一つであるグレージング(色の深みを出したり統一感を出すため、絵全体に薄く溶いた絵の具をかけること)を制作過程で行ったのち、残された刷毛の筆跡をなぞるという方法で面白い絵が描けないかと模索しています。

 同時に、今年に入ってからとりあえず手を動かすということをたくさんしようと考え、取材の時に写真に写り込んだ人々をクローズアップして水彩で描いたり、紙に鉛筆で、まず描き始めてみてから考えるような、ドローイングを増やしました。

 描く過程で偶然性が入り込むような仕掛けを作ったり、ある意味で曖昧なまま描き進めることで生まれるノイズが、さながら古びた写真であったり擦り切れたフィルムのように、純粋な情報より味わいのある表情を見せてくれることがあるし、思ってもいなかった画面が出来上がったりもします。


2016 個展"ショートタイムトリップ"にて